細胞の健康を保つのも呼吸力

人間の身体は100兆個の細胞でできている

人間の誕生。その始まりは一つの受精卵細胞。

そう思うと今ここで自分が生きていること自体が奇跡だと思わざるを得ないですね。

心と身体の変化をたどっていくと生命の基本単位である細胞にたどり着く。

そんなふうに感じるようになったのもヨガを学んだことがきっかけでした。

ヨガは、フィジカルな動き「動」と瞑想など「静」の世界に身をおくわけですが、それ以外に自分を内観する感性を磨くことで自分をチューニングする技術を身につけていきます。

私的に自分の身体の素材=細胞を「感じる」「イメージする」ことで身体が変化を微細に感じ取る感覚を得るようになりました。

今回のコラムでは、私たちが生きるために細胞レベルでの働きがどのように活動しているかを紹介します。

 

細胞の構造

細胞は細胞膜、核、細胞質という3つの構造から成り立っています。細胞膜は、細胞の内と外を隔てている膜です。細胞の外部環境には細胞に必要な栄養素が含まれており、内側には核と細胞質があります。栄養が細胞膜を透過して細胞内に入ることで、細胞が栄養をエネルギーに変え、私たちの生命機能の燃料としています。こうした代謝活動の結果、老廃物が生じます。この老廃物を今度は細胞膜を通して細胞外に排出しなければなりません。

 

 

老廃物がなぜ早くだした方がいいの?

老廃物という言葉はよく耳にします。その老廃物が身体の中にとどまることでどのような影響があるのでしょうか。

私も昔は美容のために老廃物をはやく出したほうが良いと思っていた程度でした。

実際、生命体的に老廃物がスムーズに排出されないことは私たちの身体にとっては深刻な問題です。

なぜなら、細胞膜は栄養素や老廃物を透過させる機能があり、この膜機能に障害が生じると、栄養の枯渇または毒性作用によって細胞が死滅するからです。

 

 

生命体・細胞が生きるために必要なこと

まず一つ目は栄養素を取り込むこと。サンスクリット語で「プラーナ」と言います。

プラーナとは、呼吸すること。そして、生命に滋養を与えるだけでなく、取り込むアクションそのものも含まれています。

そして2つ目は「アパーナ」。アパーナは生命体によって排出される、不要なモノを身体からだすアクションもそうです。

 

「プラーナ」「アパーナ」は、生命生きていくための基本的活動

栄養は取り込んで、毒性のある老廃物は外に出す。これを生きている間、ずっと行わなければならないというわけです。

もし、細胞膜の透過性が高すぎると壁としての役割を果たせず、細胞は内圧で爆発するか、外圧で押しつぶされてしまいます。細胞膜の透過性のバランスをとるために「安定性」が欠かせません。

 

細胞を守るために必要な「バランス」

ほどよい透過性の細胞膜が必要なわけですが、強すぎず、弱すぎず、厚すぎず、薄すぎない、硬すぎず、柔らかすぎず。

強い・弱い二つの対照的な作用の中間をとるためにヨガでは、「スティラ」と「スカ」ということばで表現します。

あらゆる生命が生きていくうえで、封じ込めと透過、硬直と柔軟、持続と適応、空間と境界とのバランスをとらなければ細胞を安全に守ることができないのです。

 

食べる飲む栄養をプラーナ・アパーナする

私たちは、食べること・飲むこと・呼吸することで栄養を取り込み、不要なものは外に排出されます。

     固形状や液状の栄養は器官の上部から取り込まれる。

     下部か外に出される。

栄養は消化管を通り、消化作用を経て、曲がりくねった長い道を通り抜け、排出物となって下降し、やがて排出されます。出口が下部にあるために、排出するためには下降し、下向きに降ろしていく力「アパーナ」がなくてはならないのです。

 

 呼吸のプラーナ・アパーナ

気体の栄養は上部から入り、上部から出ていきます。

そのメカニズムとしては、気体が吸気として上部から取り込まれ、吸気は横隔膜より上にある肺の中にとどまります。

肺胞上の毛細血管で酸素と二酸化炭素が交換されると、今度は入ってきた道を通って排気が外に出されます。

 

 アパーナは排出物の種類によって排出する方向と作用が違う

私たちは排出物の種類に合わせて上昇・下降の両方向に自在に操る力がなれればなりません。

基本的にアパーナは下向きの方向性に作用しているので、排気の時、アパーナの下向きの流れを逆転させる能力が必要です。

 

普段アパーナは下向きに操っている

私たちは体内に排出物があると下向きに搾りだそうという性質があります。

そのためヨガはじめてする人の多くは、息を吐きるように意識すると排尿や排便の時のように下向きに搾りだす動きをすることがあります。そのため思った以上に呼吸が苦しく感じる人もいます。

 

自律神経を整えるためには吐く息を倍の長さで吐くと効果的

プラーナとアパーナがスムーズに行われるということは、細胞が健全であるとともに心身の健康を保つことにつながります。

ヨガのトレーニングを続けるとアパーナを逆転させ、スムーズ排気する能力は身につけることができます。

吐く息を長くすることで、自律神経を整えることができ、頭痛や肩凝りの軽減や冷え性の改善に効果があります。

 

 

ヨガでアパーナを逆転する力を身につけ、快適なオフィスワークや在宅勤務ができると良いですね。